夏はロイヤルフィルが静かだったのでひとしきりBBCで仕事をした後8月の終わりに休暇でホリデイへ。その後9月も比較的のんびり過ごし、いざ怒濤の10月へ。
今月はデゥトワとのスイス、イタリア、オーストリアツアーで始まりました。ソリストの一人は私の大好きなアルゲリッチ。今回も素晴らしかった。何度も言うようだけれどあの人は天然記念物&世界遺産です。彼女みたいな人、現存の演奏家で思い当たらないな。あの人がそこに座って弾き始めると、そこにいる人たち全ての愛が彼女一点に注ぎ込まれるのが見える。世界中から愛が注がれているのがわかる。彼女の技術や音楽性というのは今も昔もすごいのだけれど、歳をとってますます本質そのものだけが見える。命というのは魂である。彼女そのものを見ていたら泣きそうになった。こんなギフトのような人がこの世にはいるのだな。。。
夏の終わりにロイヤルフィルマネージングディレクターから発表があり来年6月をもって彼は引退、新しいマネージメントに変わるとのこと。このオーケストラの命運はマネージングディレクターにかかっていて、彼が長年船長を務めてきました。船長次第では船員全員路頭に迷う、というのも決して大袈裟な話しではない現状で団員は今から戦々恐々としています。
クラッシック音楽界もずいぶん様変わりして来ていて、今まで通りのやり方で仕事をし続けて行くのは難しくなっています。アルゲリッチのような人も近い将来この世界からいなくなり、演奏者も聴衆も世代が変わり、耳が変わり、感覚が変わり、いろいろなことが変わっていくと思う。
我々は仕事柄よく飛行機に乗りますが、その際私は機内誌の最後にある世界地図を見るのが大好きです。同じ世界地図を何度見ても飽きません。今回のツアーから帰ってくるときもそれを眺めていたとき、各国の国土面積の違いに改めて驚きました。ロシアや中国の大きいこと。アメリカもブラジルも南アフリカも大きい。インドやオーストラリアもなかなか大きいな。そしてそれに比べるとヨーロッパ各国は小さい。そして言うまでもなく日本の小さいこと!世界地図を見るとわかるけれど、日本の国土面積は本当に小さい。そんな中地理的にも極東でぽつんと離れた島なのに今までなんとか国際社会で地位を築いてきた日本というのはかなりユニークな国だな、と思う。
ロイヤルフィルは十年一日のごとく同じような仕事の仕方で同じような内容の仕事をしているけれど、私は常々こんなんいつまで続けていられるのかな、と正直思ってきた。あーあ、私もこれから残り半分の人生どう生きるかっていう問題があるけれど、ロイヤルフィルもそろそろ考えないとまずいんじゃないの?と思う今日この頃で、あります。