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アルゲリッチ

先週から今週にかけてはサバイバルモードでした。

21日(火)午前中パインウッドスタジオにて(007ボンド映画などが作られるところ)Y君と残りの映画音楽録音。
      午後ロンドンに急ぎ移動、午後リハーサル+夜2回のコンサート
22日(水)ロンドンにて一日中ロイヤルフィルのレコーディング
23日(木)22日に引き続き1日レコーディング
24日(金)ロンドンより北に車で4時間半(往復9時間弱!!)のHullにてコンサート。深夜2時帰宅。
25日(土)デュトワ(指揮)&アルゲリッチ(ソリスト)の日曜からのコンサートのため1日リハーサル(ロンドン)
26日(日)朝6時自宅出発、7時ヒースロー空港チェックイン、ダブリンへ。ダブリンにてデュトワ&アルゲリッチでコンサート
27日(月)朝6時30分ホテル出発ダブリン国際空港へ。お昼にロンドン着。ロイヤルフェスティバルホールへ直行。
      午後リハーサル&夜コンサート(デュトワ&アルゲリッチ)
28日(火)ロンドンから車で3時間のNottinghamにてデュトワ&ソリストが変わってジャンーフィリップ コラードでコンサート。深夜帰宅。

と、これがざっと1週間のスケジュールでした。こういうスケジュールに入るとサバイバルモードになり、自然に脳の中の必要でない電源は全て切るので意外とストレスではないのですが、肉体的にはやはりかなり疲労します。

さて、この中でのハイライトはなんと言ってもマルタアルゲリッチ。今期からロイヤルフィルの音楽監督はデュトワになりました。3年ほど前からデュトワに打診が始まりこの2年ほどはお互いの相性を試す意味でも何度か一緒に海外ツアーをしています。彼はものによっては良いものもありますが(フランスものなど)、ガッティのようにスペシャルなmagical momentを作れるタイプではあんまりないです。ただ、彼とアルゲリッチは元夫婦ということで、アルゲリッチがソリストとして招かれることがよくある、という極めて幸運な機会を提供してくれています。

特にダブリンでの彼女の演奏はセンセーショナル。一緒に弾きながら興奮して鳥肌が立ちました。誰にも手の届かないようなテクニック。彼女は現在68歳になりましたが、彼女のプロコフィエフはまるで最新の最高級スポーツカーのようなスピードと躍動感で駆け抜けます。そして言葉では言い尽くせないような彼女の音、ニュアンス。彼女の世界、持っている感覚はもう信じられないような夢の世界で、この世のものとは思えません。そういうこの世のものとは思えないことを普通にやっている彼女を眺めるのも大きな喜びで、彼女の弾いている姿をずっと見ているだけで飽きることがありません。このような才能はもう彼女自身の理解や認識もとっくに超えているところにあって、アンコールで彼女が一人弾き始めると会場は一瞬にして波打ったように静かになり、普段あちこちに散っている何千ものエネルギーがたった一点に注がれるそのパワーにも圧倒されます。でもその中で彼女は息をし、食べ、眠るという極めて普通なことをするのと同じようにピアノを弾いているだけ。ロイヤルフェスティバルホールのコンサートでは彼女が初めにゆっくり歩きながらステージに登場しただけで、すでに演奏後のような熱い、熱い拍手が皆から送られました。出てきた瞬間、子供が少しびっくりして半分嫌がるような表情をみせながら、それでもはにかんだ笑顔で”どうもありがとう”と小さく何度も言いながらピアノに近づいてゆきました。野生動物のような行動や仕草をする愛すべきマルタ。彼女のような人は世界の宝です。。。

追伸 Nottinghamでのソリストも悪くなかったですが、何しろ彼の弾いたラベルも前回私たちが共演したのが2年ほど前のアルゲリッチ。2楽章の彼女の夢のような世界があまりにも素晴らしすぎて、それに比べたらなんとも下界の音楽でした。。。

by Shinko_Hanaoka | 2009-05-02 08:39 | ロンドン  

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