人気ブログランキング | 話題のタグを見る

アゼルバイジャン

今年の夏我々は音楽祭に招待されアゼルバイジャンに2週間ほど滞在します。今年はそれ以外にもアゼルバイジャン関係のコンサートがロンドンでも数回あり、先日最後の関係コンサートがロイヤルフェスティバルホールでありました。これらロンドンコンサートのプロモーターは音楽祭とは別でどうやら今かの国は石油やガスで随分お金持ちになりつつあるようです。そのお金でアゼルバイジャンの文化やアートを世界に知ってもらおうと、億万長者になった人(まだ30代後半くらいの若い人)がこの一連のコンサートの企画運営を一手に引き受け奔走していました。

どのコンサートも全部アゼルバイジャンの作曲家によるもので、旧ソビエトの影響が色濃く伺えるものから旧ソビエト時代より遥か昔から影響のあるペルシア、中近東のテイストが濃いものまで多様でした。ソリストはギドンクレメル、シュロモミンツ、ユーリバシュメット(夏の音楽祭)等大御所が揃い、今の流行を追うことのないこのソリストの選択も興味深いものでした。これらのソリスト達は今や後から後からマーケットに乗っかってくる若手に隠れて”今いずこ?”というような存在になりつつありますが、彼らの底力というものには改めて感服しました。信念を持った音楽作り、トレンドに惑わされず信念を貫く演奏スタイルとその自信。現代のように一流アーティストとして成功するためにはまず一流ビジネスマンでなければならず、なおかつ一流プロデューサーであることも要求され、また一流プロモーターでもあらねばならない、そして情報過多+録音技術の向上による演奏スタイルの平均化が進む中彼らのような存在は貴重かつ稀になってしまいました。そんな中でこういう演奏家達に少しでも触れる機会があるのはラッキーなことです。でも、この人たちがこういう種類の音楽を作れる最後の人たちかも、と思うと絶滅危機にある天然記念物を見るような惜しい気持ちで一杯になります。

しかしこの夜のハイライトはそんなソリストでもなく、我々でもなく、9歳くらいのアゼルバイジャンの少年の歌でした。その歌はペルシア、中近東、コーラン、ユダヤ音楽が全て入り交じったような独特なもので、彼が無邪気な顔をして舞台に出て来てアカペラで歌ったのはたった5分ほど。でも彼の一声が始まった瞬間に会場の千人以上もの人の心が釘付けになりました。才能ってすごいな、と思います。アートでも、詩でも、絵でも、写真でも、音楽でも、映画でも、なんでも本物ってやっぱりすごい。本物はそれが何であろうと、場所も時も人も選びません。本物には力があります。たとえ受けとめる側に何の知識も教養も興味もなくても目を離さずにはいられない力があります。一瞬にして我々の心を捉えた9歳のボクは本物でした。。。

by shinko_hanaoka | 2010-03-12 07:14  

<< マスタークラスお知らせ! バッキンガム宮殿 >>