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レッスンatマエストローラ音楽院

ロンドンの街はいよいよクリスマス一色となってきました。

さて2016年1月16日(土)&17日(日)の週末を中心に新宿御苑のマエストローラ音楽院でレッスンを行います。初心者から上級者までどのレベルの方も歓迎です。ご興味ある方又レッスンご希望の方はwww.maestrora.jpご参照の上お電話03−6457−4546又はメールinfo@maestrora.jpにてお問い合わせください。

皆さんにお会い出来ます事を楽しみにしています!
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by Shinko_Hanaoka | 2015-11-28 21:39  

Pete Townshend

昨夜は大スターロックグループ"the Who"のPete Townshendを迎え彼が作曲したクラシカルロックオペラ”Quadrophenia"のコンサートでした。ロックやポップスの世界に疎い私はthe Whoというのが何者なのかも全く知らず、いつも通り仕事に行ったわけですがパートナーに話したら"the Who"と言ったらそれはすごいレジェンドだから写真一緒に撮ってもらってこい、とまで言われました。と言われても私は知らないので、ステージの上でも彼はすぐ隣でギターを弾いていたり歌ったりしてたものの、写真は撮ってもらいませんでしたが。

このコンサートは他にも数人のシンガーが出演しましたが久しぶりに純粋に楽しいコンサートでした。お客さまにここまで心から望まれて、その場でここまでおおいに楽しんでいただけて、これぞ音楽を介して人が集まる意義だと思う。こういう交流が職業であるPete Townshendのような人は幸福だと思う。こんな喜び味わっちゃったらもう他のことなんて出来ないよね。彼らを見ていてそんな気がした。幸福な人生。

クラシックのコンサートはなかなかこういうシンプルで根本的レベルでの交流がない。だからおおかたのものは残念ながらつまらなくなってしまう。。。
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by Shinko_Hanaoka | 2015-07-06 23:01  

ピンカスズッカーマン

昨夜は我がロイヤルフィルはロイヤルフェスティバルホールでズッカーマンをソリストに迎えベートーベン田園交響曲を含めたエルガーのヴァイオリンコンチェルトの夜でした。

このコンサートの一連は先週マンチェスターから始まり地方を周り、最終日が昨夜のロンドン。我々はズッカーマンのことをピンキーと呼ぶのですが、このピンキー今回が実は近年のロイヤルフィルとの共演でソリストのみとしての登場は初めて。彼は最近指揮者としても活動していてどちらかというと本人はヴァイオリン弾くより指揮の方がしたいらしい。が、指揮というのは当然ながらただ棒を振っていればよいというものではない。そして当たり前のことながらヴァイオリンを弾くことと指揮をすることは別物なのである。な、の、に、彼は指揮をしたいの。。。そして、ヴァイオリニストとしてはあんなに素晴らしいのに指揮をするといきなり音楽愛好家みたいになってしまうのである。これ、オケにとっては結構困りものなのだけれど、指揮させてあげないとヴァイオリン弾いてくれないのだから仕方なく(!)いつも指揮者兼ソリストとして来てもらうのである。それが、今回は堂々ソリストのみとして登場。我々もとても楽しみにしていました。

リハーサルでも最初の一音目から”おおぉっ”といういつもの血肉したたるジューシーな音。この人の音って100キロくらい先からも一発であ、ピンキーが弾いてる、ピンキーの音だ、とわかりそうなくらいそれは独特な音なのだ。が、途中からなんだかしつこすぎて半分飽き気味にならんわけでもない、くらいな調子でリハーサルは終わり地方公演も終わり、以前エルガーを一緒に弾いたナイジェルケネディの方がよくない?くらいなことを同僚と話しながらであったのだが、昨日のロンドン公演、やはりただ者ではありませんでした。多分この人ロンドンでは相当すごいだろうな、と予想はしていたものの本当に凄かった。

彼のすごさはここ一番というところでレベルを格段に上げてくるところ。彼はここ一番がどこだかよく知っていてそこで120%を出す術を知っている必殺仕事人である。腕一本で何十年にも渡って世界を渡り歩いて来た凄みである。そして、彼はそれを遊び心を持ちながら楽しくやるのである。これ、この人の素質だね。今年67歳になる今でも疲れ知らずで飛び回る彼のキャリアはこの性格的素質によるものも多いと思う。こういう人を見ていると才能って本当にすごいな、と思う。人間得意なことで好きなことをするとこんな素晴らしい人生&キャリアが待っている、という良い例ですな。もともと得意なことをやっているからいろいろな意味で一番近道ができてしかも性格的にも合っていることだと基本的に楽しい。だから80%も120%も自由自在。で、こういう人の80%は普通の人の100%をはるかに超えているので全く問題ない。おまけに120%出すときにでもこういう才能のある人は余力がある上に出してる120%なのである。そういう人の音楽は夢があって楽しいね。

マンチェスターでリハーサルの合間に私が耳栓しながら(オケはとにかくうるさいので隣でトランペットとか練習されると耳がおかしくなるから私は結構耳栓していることが多い)携帯電話をいじっていると後ろから聞き慣れたドヤ声が聞こえてくる。無視しているとその声はもっと近づいてきて”このホール何人入ると思う?”と大声で誰か言っているので”うっるさいなあ”と思いながら振り向くと、ピンキーが私に向かって何度も”このホール何人入ると思う?”と、聞いているのである。仕方なく(ピンキーはどこでもかしこでもヴァイオリンをガーガー弾くのと同じくらい誰彼かまわずしゃべりまくっている人物で、面倒なので(!?)普段は私はなるべく話しかけられないように目を合わさないようにしている!!)耳栓をはずし”はあ?”と言うと”だからあ、このホール何人入るの?”。テキトーに”知らない。6000人くらいじゃないの?”と答えると”ふーん。で、来るの2人とかだったりして。がはは”と向こうが嬉しそうに言うのでまたテキトーに”それってあなたと私?”と言うとその自虐的コメントがお気に召したようで一層嬉しそうにげらげら笑いながら、またガーガーヴァイオリンを弾き始めていました。そんなわけでこの人、全然気を使わなくてよい人です。一言で言うと機嫌の良い大きな赤ちゃんという感じ。

エルガーのヴァイオリンコンチェルトはかなりの大曲です。昨夜そんな大曲演奏中にたまたま私がふと顔を上げた瞬間に向こうもたまたまこちらに顔が向き目があった際、いつもの人懐っこい温かい顔でニコッと笑ってウィンクしてきたときには本当にびっくりした。これ、50分難曲の長丁場最終5分くらいの場所でそれも最後の山場、カデンツァに入る直前ですよ。普通そこら辺はすごい集中力がいるところで、おまけにもうそのあたり青息吐息か最後の力を振り絞って、くらいな勢いでもおかしくないはずなのにそこで子供みたいに笑ってウィンクだからね。ただモノじゃない。

最初から最後まで素晴らしい完成度、素晴らしい音楽、素晴らしいスピリットそしてグッと魂を掴む音。どこからも文句のつけようのない50分でした。


※このズッカーマンのエルガーのヴァイオリンコンチェルトは当日BBCラジオ3によりライブ録音放送されました。BBC Catch Upへグーグルから行きそのサイトのRadioをクリックすると番号が出てくるのでその3(Radio 3の意味)をさらにクリックすると画面にPerformance Miraclesというセクションが出てきます。それを押すとエルガーのヴァイオリンコンチェルトがみつかるはずで5/13まで聴くことができます。ご興味のある方はよろしければどうぞ。約50分とちょっと長いですが、圧巻です。
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by Shinko_Hanaoka | 2015-04-15 23:59  

12月

気がつけば師走。あっという間にクリスマスです。一昔前は12月ともなると飽き飽きするほどのクリスマスコンサートがあったものですがご時世のせいかその数もだいぶ減り、今年のロイヤルフィルのクリスマスコンサートはヘンデルのメサイアコンサートを抜かすと7回だけ。その3回がすでに終わりました。コンサート内容はトラディショナルなクリスマスキャロルに加え、クリスマスにちなむ曲目、そしてポピュラーなものまで含め、お話やクリスマス抽選なども入れて2時間半くらいの構成です。同僚はクリスマスコンサートというとまだシーズン始まる前から辟易感を出しますが、私はこういう季節ものは結構好きです。弾く回数にもよりますが。

昨日のロイヤルアルバートホールでのクリスマスコンサートではプログラムの終わりの方に”きよしこの夜”があって妙にジーンときました。以前この定番クリスマスソングはあまり好きではありませんでしたが、さすが定番だけあってなかなか名曲である。昔私は幼稚園は近所の教会の牧師さんやその奥様、教会の先生達で成り立っていたそれはそれは楽園のように家庭的な幼稚園に通っており、私の人生の黄金期はあそこだったと言っても過言ではないのでありますが(随分早くに人生のピークが来たとも、思う)、毎年クリスマスイブには園長先生(牧師さん)を先頭に教会の方々数名が教会に来る人たちの家を周り、ろうそくに灯をともしそれぞれの家の前でクリスマスキャロルを数曲歌い次の行き先に去ってゆく、ということがありました。それは彼らが私たちに祝福があるようにとひっそりと行われていたもので誰かが聴いているからとか、それを見たり聴いたりしたら参加しないといけない、とかそんなものでは全くなかったのですが、私は楽しみにしていたものです。私が幼稚園を卒業しても続けられていて、毎年クリスマスイブの夜には夜9時過ぎくらいから外の物音に耳を澄ましていたものです。このクリスマスキャロルとサンタさんが来る、というのがクリスマスの定番であった私にとっては、なんと言っても気づかないうちに彼らが歌い過ぎ去ってしまっては一大事ですから。何度も外をチェックしたりして、まだかなまだかな、と思い、もう今年は来ないのかな、と思ったくらいに微かな歌声が外から聴こえてきて、コートを引っ掛けて急いで外に出て私も一緒に寒い夜空の下でクリスマスキャロルを歌ったものです。

そんなことを昨夜きよしこの夜を弾きながらふと思い出しました。人生大事な事はたくさんあるが、まあ、こういうことがやはり一番大事なことなのかな、と思う。良心に囲まれて生きる、ということ。そうでないと自分自身が良心になるのも難しいからね。この季節になると恒例行事としてでもクリスマスコンサートに来て、そんなことを皆が思い出すのも悪くないと思う。そういう私はクリスチャンでもなく、幼稚園時代にはむしろその教えや教会そのもの等に3歳児ながら懐疑的であったりもしたのだが。。。!

ロンドンの日本人向け週間新聞Japan update weeklyの12月11日付け発行紙”イギリスに暮らす”欄に私のインタビューが載りました。ウェブサイトはwww.japanupdate.co.ukです。お時間ありましたらご覧ください。

今年もいつ途絶えるともしれないブログにお付き合いくださいましてありがとうございました。皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください。
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by Shinko_Hanaoka | 2014-12-13 01:16  

あっという間に秋

夏はロイヤルフィルが静かだったのでひとしきりBBCで仕事をした後8月の終わりに休暇でホリデイへ。その後9月も比較的のんびり過ごし、いざ怒濤の10月へ。

今月はデゥトワとのスイス、イタリア、オーストリアツアーで始まりました。ソリストの一人は私の大好きなアルゲリッチ。今回も素晴らしかった。何度も言うようだけれどあの人は天然記念物&世界遺産です。彼女みたいな人、現存の演奏家で思い当たらないな。あの人がそこに座って弾き始めると、そこにいる人たち全ての愛が彼女一点に注ぎ込まれるのが見える。世界中から愛が注がれているのがわかる。彼女の技術や音楽性というのは今も昔もすごいのだけれど、歳をとってますます本質そのものだけが見える。命というのは魂である。彼女そのものを見ていたら泣きそうになった。こんなギフトのような人がこの世にはいるのだな。。。

夏の終わりにロイヤルフィルマネージングディレクターから発表があり来年6月をもって彼は引退、新しいマネージメントに変わるとのこと。このオーケストラの命運はマネージングディレクターにかかっていて、彼が長年船長を務めてきました。船長次第では船員全員路頭に迷う、というのも決して大袈裟な話しではない現状で団員は今から戦々恐々としています。

クラッシック音楽界もずいぶん様変わりして来ていて、今まで通りのやり方で仕事をし続けて行くのは難しくなっています。アルゲリッチのような人も近い将来この世界からいなくなり、演奏者も聴衆も世代が変わり、耳が変わり、感覚が変わり、いろいろなことが変わっていくと思う。

我々は仕事柄よく飛行機に乗りますが、その際私は機内誌の最後にある世界地図を見るのが大好きです。同じ世界地図を何度見ても飽きません。今回のツアーから帰ってくるときもそれを眺めていたとき、各国の国土面積の違いに改めて驚きました。ロシアや中国の大きいこと。アメリカもブラジルも南アフリカも大きい。インドやオーストラリアもなかなか大きいな。そしてそれに比べるとヨーロッパ各国は小さい。そして言うまでもなく日本の小さいこと!世界地図を見るとわかるけれど、日本の国土面積は本当に小さい。そんな中地理的にも極東でぽつんと離れた島なのに今までなんとか国際社会で地位を築いてきた日本というのはかなりユニークな国だな、と思う。

ロイヤルフィルは十年一日のごとく同じような仕事の仕方で同じような内容の仕事をしているけれど、私は常々こんなんいつまで続けていられるのかな、と正直思ってきた。あーあ、私もこれから残り半分の人生どう生きるかっていう問題があるけれど、ロイヤルフィルもそろそろ考えないとまずいんじゃないの?と思う今日この頃で、あります。
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by Shinko_Hanaoka | 2014-10-14 01:33  

また、、、ケガ!

ぼーっとしている矢先何故か頭上からモノが落ちてくる。

2年前の右親指骨折のときもツアー中ぼーっと飛行機から降りるのを待っていたら頭上からスーツケースが落ちて来て、今回はぼーっと歩いていたらベッドが落ちて来た。今回も海外ツアー中でBBCとスペインはグラナダへ行ったホテル内でぼーっと廊下を歩いていたら2、3メートル先に立てかけてあった移動中のベッドが鉄のフレームごと急に倒れて来てフルスピードで私の右腕に落ちて来たってわけ。骨に異常がないことはわかったものの腱や筋肉を打撲していてお皿一枚持ち上げられずその日のアルハンブラ宮殿内でのコンサートは弾けず夜空の下観客席で過ごしました。

本当はすぐにその後ロイヤルフィルとメキシコツアーのはずでしたが、さすがにコップ一杯の水を持ち上げるのも痛いのでは行っても意味がないのでキャンセル。

昨日知る人ぞ知る気功の先生に治療をしていただいたらあっという間に良くなりました。この先生は本当にすごいのだけれど、実際治療していただくとその効果にびっくりする。というわけけで、また降って湧いた束の間のお休みを満喫することとしましょう!今回は1、2週間で本当に束の間だけれどね。。。!
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by Shinko_Hanaoka | 2014-07-10 19:27  

ご無沙汰しました

前回のブログから2ヶ月以上経ってしまいました。4月はツアー三昧で疲労困憊。とにかく移動、空港、駅、会場のローテーションでまともな食事をする間もなくどこかの売店で買ったサンドイッチを食べ続けた一ヶ月でした。5月に入ると月半ばのリサイタルに向けて準備が始まりこれまたてんてこ舞い。その昔学校を卒業してからイギリスではロイヤルフィルの仕事がフルタイムであるのでソロ活動は全くしていなかったのですが、ご縁あってメイフェアのプライベートクラブで毎月やっているリサイタルシリーズのお誘いを受け、ロンドン初のリサイタルとなりました。聴衆の方々は皆さん音楽好きで楽しんで聴いてくださるのが嬉しかったです。

そして今月はまたオケの仕事に戻り季節労働者のように恒例の夏のBBCの仕事も始まりました。昨日は友人の招待で葉加瀬太郎さんのコンサートに行ってきました。彼はしばらくこちらに本拠を置き、日本へ仕事をしに戻るという形をとってきたようですがこれからまた日本に本拠を戻されるのでロンドンで最後の公演、というようなふれこみで”エンターテーメントとはなんぞや”ということを知るため楽しみに行ってきました。

Be yourself. 

こうでないといけない。葉加瀬さんはイギリスで思ったように活動の幅を広げていけなかったことも日本へ帰られる理由の一つのようですが、それはこういうことなんだと思う。自信をもって自分の人生を生き、自分を表現出来なければその人というものがそこで活きない。そこに初めて人は評価を与えだすわけだから、そうでなくては人もモノもついてこない。人のことはさておき自分のこと、である。最近一言で自分の気持ちを表すと、つまらん。この一言に尽きる。とにかくつまらん、のよ。何がつまらんって、私はBe yourselfという仕事もしていなければ多くの時間を費やす同僚ともいろいろな意味でかなりの隔たりを感じる。そういうのって本当につまらんよね。今まではいろいろと経験したり見せてもらったこともあるしそういうちょっとつまらんのもそれはそれで良かったけれど、爆発的にそれがいやになりつつある。借りてきた猫、には限界があるということだ。42歳にもなって借りてきた猫をやっている場合じゃないのである。

現在、お尻に火がつきながら悩み中。とかなんとか言っても明日もBBCへ行くし、ロイヤルフィルとメキシコにも行きます。でもそれはそれ、これはこれ。私の将来や、如何に!?
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by shinko_hanaoka | 2014-06-22 20:58  

そして、ロンドンへ戻る

11月28日(木)のリサイタル、お忙しい中お越しくださいましてありがとうございました。新しい弓は少し慣れないところもありましたが、ホールで弾いてみたら単純に音の大きさにおののき(!)ここまで違うとは、と弓の威力に感心しました。自主リサイタルはいらしてくださるお客様、あらゆる形でお力添えくださる方々、家族など、周囲のサポートあって出来るもの。皆様あってのShinkoであります。感謝の一言です。

若いときは何かやることに意義があったり挑戦することにも意義があったりするけれど、ある程度歳をとってくるとそれだけではイカん。そういった意味で最近私は悩み深い(!?)のであるが、これからさてどうするのか今回のリサイタルでも考えさせられております。本当はアルゲリッチくらいでなければ人前で弾いちゃイカんのだ。でもそれを言っちゃあおしまいよ、ということで私を含めたくさんの音楽家があんな形でこんな形で弾き続けているわけだけれど、でもそれじゃイカんのである(あくまで私的には)。

今年少し仕事を減らしてオーケストラの仕事以外のこともした結果、イギリスでは教会のランチタイムコンサートなんかも出来て楽しかった。そのときに、ロイヤルフィルで過去10年必死に走り学び感じひとサイクル終わったように、次の10年で今度はオケ以外でチェロを弾く形で必死になってみたい、とふと思った。ただ、そのために持っている自分の才能の比例しなさを思うと非常にがっかりするし意欲も多少そがれるのであるが。失望とはこのことだ。

イギリスに戻る飛行機の中で見ていたドキュメンタリー番組の中でベートーベンの交響曲の短調の2楽章が使われていてその音楽がひどく心に迫った。ガッティの音楽を思い出した。あの人も音楽をするために天から遣わされた数少ない一人で、そういう人たちから出てくる音楽は原点へそして純粋な真実へ連れ戻してくれる。そうやりたくても能力不足で出来ない自分に、そしておそらく同様の他の多くの人たちにもそれを共有させてくれて、またそれでもそこを目指したいと思わせ勇気を与えてくれる温かさと寛容さを持っている。

ロンドンは私をいつも”普通”に戻してくれる。景気のようなものとは関係なくずっと同じ暮らしを続ける人たちが上にも下にもたくさんいるこの国には、harsh でdryなところもあるけれどずっと変わらぬ何かがあり、”全ての人たちがそのままでよい。生きたいように生きてよい”という寛容さがある。だからロンドンにいて寂しいと感じることはない。なんにもなくともここでは寂しくも大変でもないのだ。そう、だから私も欲しいだけの才能がなくても能力が足りなくても希望を捨てきらず真実を見て、まだ歩いていけるかも&歩いて行っていいのかも。
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by Shinko_Hanaoka | 2013-12-05 00:17  

BBCアジアツアー

ご苦労様なこってある。

6月、7月とロイヤルフィルとアジアツアーに行ったばかりですが、9月、10月はまた似たり寄ったりな行程で今度はBBCとアジアツアーに行って参りました。11月にはリサイタルのために日本に帰るし、12月にはロイヤルフィルでまた中国に行かなくてはいけないし、1月はアメリカツアーだし、本当はこの時期にまた3週間のアジアツアーなんてやりたくなかったのである。しかし、あわよくば(!?)BBCに転職もいいかなと密かに思っている私は、せっかく誘っていただいたので行く事にしたのでした。以前はBBCオケの仕事の仕方はお役所仕事みたいで物足りないようにも思いましたが、月日が経つにつれ私のプライオリティーも変わって来て、彼らの労働条件のよさやツアーの少なさも魅力になってきた今日この頃。時々お世話にはなっているものの別のオケで仕事を持っているためそうそう頻繁に行くことがなかったので実際どんな感じなのか知る為にも良い機会だと思い参加しました。

”所変われば”ではないけれど”会社かわれば”で、日程の組み方から移動の仕方、スケジュール表に書いてある内容までロイヤルフィルとは全然違う。ロイヤルフィルはスケジュールなんておおまかなことがざっと書いてあるだけで、出たとこ勝負あとは自分で勝手にやってくれ、みたいな感じですがBBCのスケジュール表は至れり尽くせりであらゆる注意事項やら現地情報やらワクチン情報やらが載っている。33ページにわたるスケジュール表が配られたときにはびっくらした。というか、こんな伝染病のことなんか知らないで6月もうすでにアジア行っちゃったんですけど、という感じであった。スペアの弦や松やにも現地調達が難しい場所もあるから多めに持って行くように、とかなんだか幼稚園の遠足みたいなのりで初めこそ調子が狂ったけれど、長旅のあとにはちゃんとフリーデイがあったりリハーサルが十分あったり、こうやって労働条件が守られたところで仕事するのはやはり良いものである。3週間のツアーに出るということはどこのオケでもその期間働きに出るわけで、いくらBBCといえどそう楽をしているわけではないのだけれど、ほんの少しの違いが体の負担に大きな違いが出てその体の負担の違いが仕事のクオリティの違いにも出てくるのである。特に歳を取ってくると、ね。ツアーから帰って来たあとの疲労度も全然違うのである。ロイヤルフィルはロイヤルフィルの良さがあるけれど、そろそろこういうのも良い。私が気に入ったからといって仕事がふってくるわけでもゲットできるわけでもないが、とりあえずここ、気に入った!皆、割と静かでおとなしめなところもなかなかよろしい。

ということで、こういう発見、確認ができて意義ある旅でありました。そして、あっという間に日本です!
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by Shinko_Hanaoka | 2013-10-24 19:49  

スイスツアー

毎年夏の終わりロイヤルフィルはスイスのジュネーブ湖畔にあるMontreuxという街で開催される音楽祭に参加します。財政難で来年からは呼んでもらえないそうだけれど。。。

少し前まで私の中の主任指揮者のデゥトワに対する評価は前主任指揮者ガッティに比べると低いものだった。でも最近私はいろいろな意味で彼を見直している(エラソーな言い方ではあるが)。人間千差万別で性質や特質も違えがものごとへのアプローチの仕方も違う。デゥトワはデゥトワでその良さはある。そしてなんと言っても76歳であれだけ精力的に活動しているのはただ者ではない。彼の良さはリハーサルの仕方だとか完成させるまでのアプローチだとかいろいろあるのだが、全く関係ない角度から一つ、一流の良いソリストを連れてきてくれる、というのがある。彼にはそういった人との繋がりを上手に使い、また活かせる才能もあるのだろう。

今回のソリストの一人はマルタアルゲリッチ。ソリストとして演奏することが少なくなっている彼女の生のソロ演奏なんてもう見ることはないのかな、と思っていたのでちょっとびっくりしました。彼女の音楽、演奏は本当に尊い。信じられないレベルのテクニックというのは周知の事実だけれど、それ以上に彼女の音は特別な音をしている。音楽に心が向いている人はこういう音を出すのだろう。インターネットやipadやiphoneにまみれた世界とは違う世界の音。現代の音楽家はこういう音をほとんど出さない。すごく有名で一流と言われていている人でも多くはこういう音じゃない。現代の演奏家の音はもっとざわざわしている。彼らは何かがすごかったりすることもあってそれだけ聴いていると気づかないけれど、こうやって超越したものを聴くと他の音がいかに雑で荒っぽくて時に心がどこか違うところに向いているかわかる。

今の時代genuineに生きるのは難しい。心があっちを向いてみたりこっちに向いてみたり、あれが気になったりこれが気になったり。だからアルゲリッチみたいに、とどのつまり音楽のことしか考えていない人から出てくる音は尊いのだと思う。

でも、genuineに生きるのが難しいのは現代に限ったことではない、か。それが出来る人はどの時代でも稀なのかも。アルゲリッチから出てくる音楽は稀すぎてどこがどうなって、なんのコンビネーションでああいうものが出てくるのか本当に不思議である。
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by Shinko_Hanaoka | 2013-09-13 04:25