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ピンカスズッカーマン

今月初めのゲオルギューのレコーディングはあの後すっかり雲行きが怪しくなり後半2日分の録音は彼女が具合が悪いということでキャンセル。確かに2日目はすでに半分もしないうちに彼女”もう歌えない”とか言ってどっかに行っちゃったもんね。でも、まだ3曲も録音していないのに(全部で15分にも満たない)、どーするの?という感じで尻切れトンボに無期延期中。その後すぐに始まった名ヴァイオリニスト、ピンカスズッカーマンとのUKツアー。彼は今年からロイヤルフィルの客員指揮者になりました。このツアーも彼が指揮者&ソリスト。余談ですが名ソリストはある程度のお歳になってくるとなぜか指揮をやりたがるのだけれど、これ、私にとってはいつも疑問。これだけ本業が素晴らしいのだから何も指揮なんかしなくていいのに。。。というのが皆の本音です。でも、あれだけ本業が素晴らしくてずーっと人生のほとんどそれだけやっていると、やっぱり飽きるのかもね。それもわかる気はするけど。

さてズッカーマンのベートベンヴァイオリンコンチェルト、いつ聴いても何度聴いても素晴らしい。彼のヴァイオリンは官能性、遊び、冒険に満ちています。この3つが揃ったら誰でも心踊らされずにはいられません。そして彼はいつも本番で果敢にリスクを負います。そういう姿勢がすごいなあ、と思う。そういう意味で、変な言い方だけれど、常に彼は本番のステージの上で身体を張って自分のreputationをearnしている、という感じがします。それを毎日何年、何十年やってきてそれでもなおそういう精神を失わずステージに上り自分の価値を証明する、凄みがある。それが出来るのも才能あってのことですが。こういう人生は誰にでも与えられる人生ではないと思うけれど、privilegeな人生ですね。今の演奏家(と、ひとくくりにするのはいけないけれど)ってあんまりリスクを負わない。でもこの前ギドンクレメルと仕事をしたときも思ったけれど一昔前の一流演奏家達に共通するのは”まず音楽ありき”という姿勢。そのために時に不揃いになったり不細工になったりすることを厭いません。もちろん才能ある素晴らしい演奏家達はそのリスクが報われる確率が極めて高いのだけれど。それからあの独特な”昔の人の音”。これからこういう音を聴けるチャンスはどんどんなくなるからしっかり心に刻んでおかないと。。。

オケの人が”自分もあんな風にヴァイオリンが弾けたならなあ。。。そうしたらもう思い残すことはない”と言っていたけれど、私も、そう思う。
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by shinko_hanaoka | 2010-05-12 12:45