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レコーディング

 今日はロイヤルフィルとは別の仕事で映画音楽の録音がありました。昔のハウスメートが映画音楽作曲家で彼は私の演奏をとてもかってくれていて、彼の録音にチェロのソロが必要だとこうして必ず連絡してきてくれます。自分の力を信じてくれる人がいるということはありがたいことです。

 今日はホラー映画の音楽でしたがマイクなどのセッティングをしているところにエンジニアのマットなる人物が現れました。彼はエンジニアとしてグラミー賞を受賞しているその道ではトップクラスの人ということですが、今回の映画では私の元ハウスメートY君は彼と組んでいるらしくこのマットが全てのミクシングをするそうです。この日の録音のために数日前高価なマイクを2つ購入したそうでそのマイクは1950年代製だそうですが、現代のマイクより全然音が良いそうです。

 今日の録音は私のチェロ一本だけということでセッティングなどは彼に頼むには及ばずで、Y君のアシスタントが担当しました。でもこのマット、いてもたってもいられなかったようでわざわざ車で1時間もかけてチェックしにきてくれました。彼は、私がまだロイヤルフィルに入る以前、時間と自由がたっぷりあった頃にY君と一緒に録音した映画音楽用サンプルを聴いて私のチェロのファンになったそうです。私に会うの半分、マイクの調子を確かめるの半分で別の仕事で自分もほとんど缶ずめ状態にもかかわらず抜け出してたった5分のために来てくれました。この人は全部自分の耳だけで何ヘルツか聴き分けることのできる驚くべきプロフェッショナルです。この5分間の間にさっと私の音をチェックしながらY君にエンジニアとして適切なアドバイスを残していきました。

 その後も録音中に2度もY君の携帯にメールが入り、サウンドのエッジをとった方がいいからどこそこの機械のどこそこをオフにしたらどうか、とか、3本目のマイクをオリジナルの場所から50センチほどバックしたらもっと低音のカバーがよくなるはずだ、とかもう真剣そのものなんですね。私は今日はこのマットの送り出すグッドエネルギーにとてもインスパイヤーされました。もう自分の仕事となったらベストを求めて、いてもたってもいられないような真剣さ、純粋さ。仕事の本随とはこういうところにあることを改めて思いました。そしてそういう態度と気持ちを持ってする仕事の楽しいこと。そしてそういう風に仕事をする人たちの美しいこと。そしてその良いエネルギーがどんどん伝染して相乗効果を生み出す面白さ。考えてみれば”仕事”とは本来そうやってひたむきに自分の能力を最大限に活かそうとする行為のはずです。それがたとえ音楽家であろうとクリーナーであろうと郵便局員であろうと政治家であろうと。今日は私もチェリストとして、今現在自分のもてる技術と経験を最大限に使って一生懸命弾いてきました。だから今日はすっごく楽しかったです。それが、たった一つの音を長くのばすだけのところであっても。。。!
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by Shinko_Hanaoka | 2009-03-30 12:16 | ロンドン  

クラシカルスペクタクラー

今週は木曜からずっと連日連夜ロイヤルアルバートホールにて我々にとっては地獄(!?)のクラシカルスペクタクラーです。このコンサートは1コンサート約3時間で”あっ、この曲知ってる、知ってる!”といういわゆる有名どころな曲を集めて、お話、光の演出など交えながら延々3時間弾きつずける、というなかなか大衆的な企画です。

年に2回春と秋に必ずあるコンサートのシリーズでお客様には大変好評なのです。ロイヤルフィルの仕事はこうしたコマーシャル要素の多いものからスタンダードなコンサートまで多岐にわたります。一昨日、昨日、今日はマチネと夜とで毎日合計6時間コンサート。というわけで皆かなりばて気味ですが、今回のクラシカルスペクタクラーでは新企画としてチェロのあの有名な”白鳥”をオルガン伴奏バックに瀕死の白鳥をEnglish National Balletのプリンシパルダンサーがしつらえた特別舞台で踊る、といういかにもこのプロダクションが考えそうな演目が入っています。

見る前は正直”チープな演出。。。”と思っていましたが実際見てみたらすごく良かったです。企画自体はチープでもアーティストが素晴らしければ決して出来上がりはチープにはならないものなんですね、やっぱり。私は3メートルくらいのところから見ているのですが、細やかな手先、顔の表現、すくっと顔を上げてただ立っている姿、久しぶりにバレエを、それもこんなに間近にみてその磨き抜かれた美しさに約3分半、我を忘れてじーっと見入ってしまいました。今回はこのスワンが見れるし、さっきのマチネでは舞台脇のおじいちゃんが一曲終わるたびに私に向かって親指を上げてグーのサインを出して喜んでいたので、3時間にわたるポピュラークラシックのオンパレードも、ま、許せるか、です。し、か、し、この楽観的な気分が今日3/23の夜10時半最後のエルガー”威風堂々”を弾き終わるまで続いているかは、疑問ですが。

かくいう私は今そのマチネと夜の公演の間のしばしの休憩中。そろそろ時間です。舞台袖に戻らねば。。。!
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by Shinko_Hanaoka | 2009-03-24 08:12 | ロイヤルフィル  

マエストロDanieli Gatti、最後のコンサート。

 昨晩はロイヤルフェスティバルホールでロイヤルフィルで13年にわたり音楽監督をつとめた、マエストロDanieli Gattiによる彼の音楽監督としての最後のコンサートがありました。
 プログラムはクラシカルにモーツァルトのジュピターとベートーベン交響曲第9番のみ。彼はマーラーやワーグナー、Rシュトラウスのような壮大なものにも定評がありますがモーツァルトやベートーベンなども輝きと力に満ちています。世の中にはgiftedという人たちがいて彼は神様から贈り物を与えられた人、それも大きなギフトを与えられた人の一人です。彼自身が大きなエンジンとなり我々が一丸となって大きなうねりを作り出すコンサートは常に感動的で、私は毎回彼の才能の大きさに圧倒されます(多分会場にいる全ての人が圧倒されているのだと思います)。
 人としては傲慢だったりエゴイスティックだったりするのですが、音楽に対する情熱、dedication、忍耐には現代ではまれにみる純粋さと真実がそこにあります。彼自身があれだけ大きなエンジンとなって何千人もの人に感動のバイブレーションを送ることができるのは、全てはこの真摯さからくるのでしょう。私は昨日ステージで弾きながらああ、自分はなんてラッキーなんだろうと思いました。我々の仕事は決してお金をたくさん稼げる職業でもなければはたからみるほど華やかな仕事でもありませんが、今日この日このときこれだけの感動の中に身をおける幸せ、そしてその感動の一部となることができる幸せというものを感謝とともにあらためて感じた一晩でした。Speechlessです。It was simply a joy to play...
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by Shinko_Hanaoka | 2009-03-20 10:30 | ロイヤルフィル