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地方公演

昨日は1週間ぶりの仕事で地方でのコンサートでした。我々は1日半と短いものから1ヶ月と長いものまで多くの海外ツアーを年間こなしますが、その合間にイギリス国内でロンドンはもとより各地方で忙しく演奏活動を行っています。昨日はロンドンから車で3時間半ほど北東に上がったLowestoftという港町でのコンサート。国内地方コンサートの際私たちは乗り合い馬車のように誰かが運転して何人かで一緒に同車移動(lift share)します。何故かというと、国内コンサートの場合日帰りがほとんどで、現地に電車で行ってしまうとコンサート終了後帰りの電車がなくてロンドンに戻ってこられなくなってしまうからです。で、なぜ皆でバスで移動しないかというと、皆住む地域が違うので1カ所を集合ポイントにするとかえって合理的ではないからです(夜遅くバスで帰ってきて集合地点が全然自宅と別方角だったりすると、そこから深夜どうやって家に帰るの?ということになるわけです)。ほとんどのロンドンのミュージシャン住居はロンドン南東部に集まっていますが、オーケストラの中で唯一中心部に住むスノッブ(!?)の私は誰もご近所さんがいないのでlift shareは結構頭がイタいです。移動が仕事の半分を占める私たちの仕事。Lift shareの人選も皆それなりに慎重で、お互い気分よく旅路を過ごせる相手を選びます。私がいつも一緒に移動するのは仲良しのジュリアンおじちゃんとアンドリュー、そこに時々ダニエルかビルが加わります。

昨晩はロッシーニやウェーバー、モーツァルトと簡単なプログラム。モーツァルトは交響曲ジュピター。モーツァルトのシンフォニーはどちらかというと編成が小さく、室内交響曲の部類に入るためロイヤルフィルのように大きなシンフォニーオーケストラは意外やめったにプログラムに取り入れません。Lowestoftのホールは小さめなので、オケも編成縮小してそれに見合ったプログラムが毎回立てられます。昨晩のジュピターは先月ロイヤルフェスティバルホールのマエストロGattiのそれとはエラい違いでしたが、それでもモーツアルトは、特にこのジュピターやはり良いです。。。キラキラして、最後の楽章なんかは弾きながら細胞が喜びに満ち溢れてきます(たとえそれが昨日のようなヘボい指揮者とでも。。。!)。昨晩演奏中モーツァルトの天上の世界を感じながら”うーん、秋のカルテットコンサートの選曲間違ったかな”などと考えていました。今秋我々ロイヤルフィルは9月後半から10月初めまで日本ツアーがあり各地を回ります。その際ロイヤルフィルメンバーによる弦楽四重奏の東京でのコンサートが別に企画されており(これも後日11月の私のリサイタルと一緒に改めてお知らせさせていただきます!)、その選曲がハイドンに始まって、ベートーベンそしてメンデルスゾーンで決定しました。私は個人的にはハイドンよりモーツァルトの方が閃きがあって好きなのですがバイオリニストの一人がこのハイドンを押したので。

地方公演では休憩が始まると、さーっと脇から昔の駅弁売りみたいなアイスクリーム売りが会場に登場して皆列を作って買い始めます。舞台の脇でそれが始まるので舞台上から今日はどんなアイスクリームが売ってるかなぁ、と眺めていたら後ろから同僚レイチェルが”今日はご褒美に私がシンコにアイスクリームを買ってあげる!どれがいいの?”と言うので、コーンつきのアイスクリームを彼女に買ってもらいぺろぺろしながら休憩を過ごし、さあ後半のコンサートを弾き終えたらロンドンに向けてダーッシュ!!!行きはジュリアンと一緒に来たのですが、彼は後半降り版だったので先に帰り、彼が自分の代わりといって探してきてくれたデービットが私をロンドンまで送り届けてくれることに。ただしデービットはロンドン北部在住なため私はそこから自力で自宅のある中心部まで戻らなくていけません。ジュリアンは南東部在住なので電車がなくなるといつも心配して遠回りでも必ず私を家まで送り届けてくれますが、通常誰とlift shareしても毎日皆深夜帰宅で疲れている中そんな親切なことはしてくれません。私も同じ厳しいworking condition下で働く者として必要以上に甘えるつもりは全くありません。で、私がとにかくなんとかしてロンドン中心に向かう地下鉄の最終に間にあいたいことを察し(そうでないと心配しながら怪しいMini Cabに乗るしか帰宅手段がなくなります。ロンドン郊外には安全なblack cabは走ってないので)デービットが車を飛ばしに飛ばしてくれて、12時3分前にロンドン北部の地下鉄駅に到着。とにかく中心部までいければこっちのもの、あとはどうとでもなります。一番困るのは郊外でおろされて路頭に迷うこと。でも、昨日はとにかくシンデレラの魔法がとける(!?)12時前に地下鉄に飛び乗り、あとはスムースにあっという間に12時半には家に着きました。ラッキー!と思っているところにジュリアンから心配して(というより多分責任を感じて)携帯にメールが入りました。”無事に帰れた?” 

こんな、”ロイヤル”とはほど遠い私たちの生活ですが、こうしてロイヤルフィルでは本当に人には恵まれて感謝です。

by Shinko_Hanaoka | 2009-04-19 10:44 | ロイヤルフィル  

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