弓探しの、巻

ずっと冬のようだったイギリスにも6月に入ってようやく春が訪れました。と言ってもいつまで続くかわからないこの陽気、というよりこれが今期最後かもしれないお天気の数日、おてんとうさまが上で輝いているうちに十分楽しんでおかないと!

さて、私はそんな中5月は弓探しの奔走していました。楽器と弓。これは弦楽器奏者にとってはとても大事なことで、先日友人チェリストのコンサートに行ったときも痛感しました。彼は素晴らしいチェリストなのですが、楽器も弓も良いものを持っていない。そうするとバービカンホールのような大きな場所でコンチェルトなどを弾くと感動を呼ぶ事ができない。音の魅力とはすごい力だと最近よく思う。音に魅力がないとどんなにその人に力量があってもその力量が半分も伝わらないことになる。そしてそれにはある程度の楽器と弓が必要になるのだ。これはどうしようもない事実。逆に私は仕事でそんなに力量はないのなだけれどパトロンやスポンサーのおかげで素晴らしい楽器&弓を持っている奏者の演奏を聴く機会も多くあります。その際”楽器がいいなあ”とこれまた本当にすぐ分かるのです。

私は運良く10代の終わりに今使っている楽器にばったり出会い、上には上があるもののとても良いチェロに恵まれました。しかし弓に関してはあまりご縁がなく現在使っている弓に不満を抱えつつ現在に至っています。楽器がなんの苦労もなくある日突然目の前に現れ手に入れることが出来たので、弓に関しては少々おっくうになっていました。そして私の望む弓がそんなに簡単にみつからないであろうことも、その額もそれなりのものになるであろうことも想像できたので今まで手つかずにいたのですが、今回ようやくその重い腰をあげ弓探しの旅に乗り出しました。

私の理想の弓は強さとパワーがありしかもしなやかさに品、エレガンスを備え、かつ健康でバランスがよくレスポンスの良い弓。これに自分の知らない世界を教えてくれる弓であればもう言う事なし。しかし、私はもうこの”運命の弓”には6年前に出会ってしまっているんだな。。。あれは忘れもしない2007年の夏。ひょんなことでロンドンの楽器屋さんを訪れていたときにその弓はたまたまその時にそこにあり、たまたま試したまでだったのですが、これが私の最初で最後のピンときた弓。しかし、お値段聞いてびっくり。身分不相応であるのもさることながらとても手の届く値段ではありませんでした。その弓はその後すぐ目の飛び出るような値段でオークションで落札され現在著名なチェリストが使用しています。

楽器はオールドイタリアン、弓はオールドフレンチ。これが王道。楽器も状態の良いものでオールドイタリアンは年々減って希少価値から値段もどんどん上がっています。これが弓になると消耗品であることからどんどんこの反比例度が加速して状態が良いもので使えるオールドフレンチしかもチェロの弓自体が非常に数少なくなっています。この数年のオールドフレンチチェロ弓の値段の上がり方は半端ではありません。

そして私の予算は2007年運命の出会いを果たした弓の落札額の半分にも満たない額。。。しかも、私はもう最高の弓の味を知っちゃったのでそれが弓を試す時の自分の指針になってしまっているわけ。ああ、知ってるって不幸。知らなきゃこれでもあれでも良いかな、と思ってたかもしれないのに。ロンドンの楽器店に勤める友人に「ねえ、私の予算で本当に”これだ!”なんて弓みつかるの??」と駆けずり回っている挙げ句に気に入ったものがみつからなくて泣きたくなった私は聞きました。そしたら彼女「これだ!っての、みつかります」って。切羽詰まった私はそのとき「じゃあ、そんな弓どこにあるんだよお!」と半なき状態で彼女に訴えたものです。それに私は”これだ!”ってのにもう出会っちゃったんだよぉぉぉ!!!で、もうそれ、違う人のところに行っちゃったの!!

弓探しの旅、まだまだつづく。。。
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by Shinko_Hanaoka | 2013-06-03 19:02  

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